1987年に川崎汽船株式会社から情報・通信システムが独立して設立された当社には、長年にわたって海運業をささえるためのシステム開発に取り組んできた歴史があります。実際にシステム開発に携わってきた各部門の社員が、これまでのヒストリーを振り返りつつ、これからの開発業務のあり方について語りました。
持田
2008年頃に災害対策やセキュリティへの対応、内部統制などテーマを持った「基盤統合プロジェクト」が立ち上がりました。約2年かけて再構築が推進され、サーバーを外部のデータセンターへ移行し、乱立していた物理サーバーを仮想化、さらにデータベースを統合するなど、システムの一斉切り替えが進められていきました。この基盤統合は、当時約100名いた社員の大半が関わり、さらに協力会社も加えての一大プロジェクトとなりました。このプロジェクトによって、システムの稼働環境や開発手法が統一されたため、川崎汽船で使われている多数のシステムとの連携やメンテナンスもしやすくなりました。また、セキュリティ対応や内部統制の一貫として専用の認証システムの構築、ワークフローシステム導入などは、現在のシステム構成のベースとなっています。
小糸
データのやりとりの効率化に寄与した開発例としては、モジュールごとに2001年から順次稼動したコンテナ船基幹業務システムGApp(Global Application)があります。当時は川崎汽船にコンテナ船部門があり※1、世界各国の拠点で別々のシステムを使っていたため、データのやりとりに手間がかかっていました。そこでグローバルにデータを一元管理するシステムを開発し、荷物の積地側と揚地側でデータを共有できるようにすることで、業務の効率化と世界各拠点で発生していたシステム運用コストの削減を実現しました。
これらの改革を通じて、IT分野への取り組みが加速し、現在のシステム基盤を築くことができました。
これが現在に至るまでの基礎となっています。
小糸
2023年には、AI-OCR(AIを活用した光学文字認識)技術を活用したシステム「CHRONUS」を開発しました。CHRONUSは、港や荷主ごとに異なる書式で作成される「積揚げ荷役作業記録書」から必要情報をAI-OCR技術によって抽出し、港の停泊に必要な料金を自動計算し、船の停泊時間の計算書を自動作成するシステムです。
齋藤
CHRONUSの開発は、当社とベンダーの分業によって実現しました。AI-OCRなど画像読み取りに特化した技術を持つベンダーと、海運業についてのノウハウのある当社が、それぞれの得意分野を生かして協力し合い、開発を進めていきました。その結果、人の手による入力・データ化が不要になり、業務フローの標準化と業務プロセスの効率化を実現しました。
小糸
当社とベンダーのコラボレーションが決まったのが2022年夏頃で、リリースは1年後と決まっていたため、全社的に声をかけて他部門にも協力してもらい、チームで一丸となってCHRONUS開発プロジェクトを進めました。開発期間中は、川崎汽船と当社とベンダーの3社で打ち合わせを行いながら内容を詰めていきました。
原田
ふだんの開発は自社内で完結していることが多いので、今回のコラボレーションにあたっては、お互いの理解を深めるためにもコミュニケーションを密にとり、進捗の報告や仕様の確認などを行うことを心がけました。
小糸
最近の開発業務においては、さまざまな得意分野をもつベンダーとの分業によってプロジェクトを推進することが増えてきています。CHRONUSにおけるAI-OCRのように、多角的な分野をとり入れた開発が今後も求められていくでしょう。
それぞれの専門分野を活かし、コラボレーションを通じて柔軟な発想で開発を進めることで、以前は困難とされていたシステムの提供がよりスピーディーに実現可能となりました。
金光
川崎汽船グループとして必要不可欠な存在である「統合船舶運航・性能管理システム K-IMS(Kawasaki Integrated Maritime Solutions)」は、運航中船舶から取得したデータを扱うシステムです。
従来より各船舶から取得したビッグデータの利活用の最大化を目指して取り組み中ですが、今後は川崎汽船と共に内製システムとのデータ連携や営業部署への利用拡大を進め、より使いやすいシステムへの再構築を進めていきます。
今後は、グループ会社ならではのスケールメリットを活かしつつ、川崎汽船のDX戦略を推進するシステム開発が求められる時代に。川崎汽船グループのITやDXを担う企業として、これからも海運業の未来のためにシステム開発の最先端を切り開いていきます。
持田
個々の力を結集し、協力と信頼のもとで目標達成に向けて取り組むチームワークを大切にしています。
小糸
ユーザーが全世界にわたるため、世界を舞台に活躍するチャンスがあります。私自身も、開発業務でアメリカやイギリスに赴任して貴重な経験を積むことができました。
金光
グループ会社のシステム開発に特化しているため、一般的なコンサルやシステム開発の会社に比べて専門性が深まるうえ、ユーザーとのコミュニケーションを効率的に行うことができます。
齋藤
会社の全員がフランクに話せる環境を生かして、先輩後輩や部門の垣根を越えて問題解決することを大切にしています。
原田
大きな会社ではないので、要件定義などの上流工程から実際のプログラミング、インフラ・ネットワークなど幅広い経験が積めます。